Cymbalaria muralis ‘Alba’
写真のお花はたぶん「スノーホワイト」という品種と思います。ツタカラクサの白花品種で、いわゆる素心タイプのアントシアニンをほとんど持たない品種です。
アントシアニンやカロチノイドなど色素の多くは、細胞の中の「液胞」と呼ばれる部分に貯蔵されます。液胞は細胞の老化の目安ともされていて、真新しい細胞にはほとんど見られず、古くなるほど大きな液胞が細胞を占めるようになります。その中にアントシアニンやカロチノイドなど、色素が溜まっていきます。
最終的には色素を貯める貯蔵庫のような使われ方をするのですが、色素の重要な働きには凍結対策があります。純粋な水はほぼ0℃で凍り始めますが、水になにかが混じっているほど凍結する温度は低くなります。秋になっていろいろな植物が紅葉するのも、冬に備えて凍結防止剤を溜めているというわけです。
写真の白花ツタカラクサのように、凍結防止剤を作れない品種はどうなるのかというと、残念ながら普通種より寒さに弱いものになります。アントシアニンには他にも、一部の病原菌を防ぐ働きがあったり、別の用途に再利用したりと植物にとっては大事な色素です。
人の目からは美しいと思えるお花でも、ほんらいあるはずのものを無くしてしまった姿は美しくないのかもしれません。普通種より性質が弱いということを忘れずに、丁寧に扱ってあげたいものです。