早咲きオミナエシ

オミナエシ「飛鳥」

Patrinia scabiosifolia Fisch. ex Trevir.

 

紹介するには時期が遅れてしまって、もう終わりかけのオミナエシです。「飛鳥(あすか)」という早生品種なので、秋の七草のくせに夏の間に咲いてしまいます。お彼岸の頃に出回る切り花のオミナエシは、「大久保」という品種が一般的です。

今でも野生のオミナエシは各地で見られますが、ススキ群落の減少と共に数を減らしている傾向だそうです。似た環境を好むので影響が出ているのでしょう。ススキやハギ、オミナエシなんて近所の野山に行けば当たり前にあったのに……と思うのですが、その「近所の野山」自体が失われつつあります。

柴山という言葉を知っている人は、それなりの年齢であろうと思います。もちろん人名ではなくて、場所としての柴山です。本来の意味は雑木林程度の意味なのですが、里山で人の手によって管理されている雑木林のことを、柴山と呼んできました。

地域住民が持ち回りで手入れを行い、下草刈りや落ち葉の整理などを行って、山菜採りやキノコ狩りなどに利用してきました。村社の敷地である事も多く、地域の共有地として機能してきたものです。

ススキやハギやオミナエシなどは、こういった柴山でよく見られる植物で、人手が入らず管理されなくなった雑木林では、他の植物に負けて徐々に減っていく運命にあるものかもしれません。自然の遷移から考えれば当たり前で、自然なことかもしれませんが、少し寂しくも感じます。