ウメノキゴケ

サクラの幹に付いたウメノキゴケ

公園やお庭の樹で幹にこんな灰色のマクのようなものを見たことはないでしょうか。少々気味悪くも感じますが、写真は敷地内のサクラの樹皮を撮ったものです。この灰色のマクのようなものがウメノキゴケです。コケといいますが地衣類というカビに近い仲間で、テラリウムやコケ玉に使うスギゴケやハイゴケとはまったく別な生物として分類されています。

ウメノキゴケとはいいますが、梅以外の樹の幹や石の表面、はてはコンクリートにも付いていることがあります。サクラや梅、松など幹肌が荒れている樹木でよく見られます。非常に生長が遅くて年に1cm程度しか育たないようで、老成した巨木ほど付いているのを見かけます。

植物にとって悪いものでは? と思われがちですが、寄生しているわけでも成長を阻害するわけでもなく、ただ住みかとしているだけのようです。もっともウメノキゴケのような地衣類が、幹を覆うほど多く見られる樹木は老木です。樹勢が衰えているバロメーターのようなものと考えられています。

地衣類の中にはイワタケという食用になる種類もあって、中華料理の高級食材にもなっています。ウメノキゴケも古くから染料として利用され、アンモニアに漬け込んで発酵させるという手間が必要ですが、きれいな赤紫色の染め物に使われてきました。今でも草木染めの染料として使われるようです。

排気ガスにとても弱く、大気汚染の指標に使われたりと、意外に身近な存在のウメノキゴケ。なかなか変わった生き物のようです。