春に向けての準備

斑入りアセビのつぼみ

Pieris japonica subsp. japonica

 

秋から冬に切り替わるタイミングで、翌年早春の開花に向けてアセビのつぼみも大きくなってきます。12月頃までは少しずつ大きく育ってそのままの状態で休眠します。

早春に咲くお花の中でも、スプリングエフェメラルと呼ばれる球根植物や宿根草は、春になってから大急ぎで土から芽を出して開花します。もちろん土の中では大きく育った新芽を準備して、一気に成長するわけです。

早春の花木として人気のあるレンギョウやロウバイは、硬く小さな冬芽のままで春まで休眠します。常緑の花木のジンチョウゲもつぼみは堅いまま。なのにアセビは写真の状態よりさらに大きく育って冬を越します。

低温による凍害や寒風による傷みなど、大事なお花をわざわざ厳しい環境にさらすのはなぜだろうと不思議に思ってしまいます。「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」という故事もありますが、アセビも同じように丈夫なお花からのみタネができるようにしているのでしょうか。

確かにアセビは低温に強く丈夫な花木で、氷河期時代に分布を広げたということも分かっています。少しでも寒さに強い次世代を生むためのメカニズムなのかもしれません。